大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

名古屋高等裁判所 昭和49年(ラ)92号 決定

国籍 大韓民国

本籍 慶尚北道

住所 福井県坂井郡

抗告人 小川幸雄こと高仁秀(仮名) 外二名

右法定代理人 親権者父 小川宏こと高仁英(仮名)

国籍 大韓民国

本籍 慶尚南道

住所 愛知県西春日井郡

相手方 山田貞子・古田貞子こと相玉順(仮名)

主文

原審判を取消す。

相手方は各抗告人に対し、昭和五〇年九月一日から各抗告人の満一八歳に達する月の終りまで、各抗告人につき毎月末日限り各金四、〇〇〇円をそれぞれ送金して支払え。

各抗告人のその余の申立を却下する。

理由

一  本件抗告の趣旨および理由

抗告人らは、「原審判を取消す。相手方は各抗告人がそれぞれ稼働して収入を得るまで各抗告人に対し毎月各金二万円を送金して支払え。」との裁判を求め、その理由とするところは、原審判が相手方に抗告人らを扶養するだけの経済的余裕がないと認定しているのは誤りであるというにある。

二  当裁判所の判断

1  抗告人ら親権者父小川宏こと高仁英と相手方とが昭和三五年一月二三日結婚したこと、二人の間に抗告人らが出生したこと、相手方が昭和四一年頃単身家出するに至つたことおよびその間の経緯、ならびに抗告人らおよび相手方の生活状況については、次に付加認定するほかは、原審判理由欄二項の1ないし8(ただし、8は上七行目まで。)に記載のとおりであるから、これを引用する。

福井家庭裁判所調査官福井俊司の調査報告書によれば、抗告人仁秀は高校一年生、抗告人仁雄は中学三年生、抗告人仁大は中学一年生に就学しており、抗告人らと父の生活費は、抗告人ら三名の学費毎月平均一万円を含めて一ヵ月最低七万五、〇〇〇円を要するところ、父が月収手取り六万円余を得るようになり、生活保護法による生活扶助は打切られたため、抗告人らは生活費の不足分を父の兄高仁徳夫婦の援助を受けて辛うじて生活を維持しているものであることが認められる。

他方、一件記録によれば、相手方は金融機関に負債があり、ホルモン焼屋の営業も必らずしも順調とはいえないので、生活は苦しいことが認められるが、相手方は、当審において、抗告人らに対し毎月一万円位であればなんとか支送りする旨自陳している事情にある。

2  そこで、本件各当事者の本件扶養請求の準拠法については相手方の本国法すなわち韓国民法に従うべきこと、同法によれば相手方は抗告人らを扶養しなければならない義務があり、相手方は抗告人らの生活を自己と同程度に確保させる義務を負うものと解せられることは、原審判理由欄三項および四項(ただし、四項は上一四行目まで。)に説示のとおりであるから、右1に認定の諸事情に照らして勘案すると、相手方は、各抗告人に対する扶養料の分担として、昭和五〇年九月一日から各抗告人が満一八歳に達する月の終りまで、各抗告人につき毎月各金四、〇〇〇円を負担すべきものと認め、毎月末日限り送金して支払を命ずるのが相当である。

3  よつて、本件申立は右の範囲で理由があるからこれを認容し、その余の請求は失当として却下すべきであるから、これと異なる原審判を取消し、主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 植村秀三 裁判官 寺本栄一 大山貞雄)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例